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神戸家庭裁判所 昭和59年(家ロ3)1号 審判 1984年7月31日

申立人 催位順

相手方 催勝巳

主文

相手方は、別紙目録記載の不動産につき、譲渡、並びに質権、抵当権、及び賃借権の設定、その他一切の処分をしてはならない。

理由

一  申立人は主文同旨の申立てをなし、その理由として別紙のとおり述べた。

二  本件記録添付の各資料及び昭和五九年(家)第一二五七号事件記録添付の各資料によれば次の事実が認められる。

1  申立人と相手方は昭和四三年一二月一一日婚姻し、その間には、長男催東明(昭和四五年二月二六日生)、二男催東宇(昭和四六年八月二四日生)、三男催東甲(昭和四九年六月二四日生)が出生したが、昭和五九年七月二〇日離婚の届出をなした。

2  申立人は相手方との婚姻中、当初は朝鮮総連の仕事をし、その後は化粧品や毛皮などのセールスをして働き、月収約二〇万円を得ており、相手方はその間いろいろな仕事について職業が一定せず家計には毎月約五万円しか入れないという状態であつた。

3  しかし、申立人と相手方は婚姻中に別紙目録記載の不動産及び○○○駅から徒歩数分の所に所在の中華料理店を相手方名義で購入した。

そして、別紙目録記載の不動産には現在申立人と前記三名の子供が居住している。

4  上記不動産は、申立人がその収入によつてローンを昭和四八年以来支払つてきているものであり、申立人は相手方に対し昭和五九年(家)第一二五七号財産分与申立事件によつて上記不動産の分与をし、その引き渡しと移転登記手続をなすよう申立てをしている。

5  相手方は、上記不動産を売却しようとして明石市内の○○不動産にその仲介を依頼している。

三  以上の事実によれば、申立人には法例一六条、北朝鮮の男女平等権に関する法令八条同法令施行細則二一条により相手方に対し財産分与を求める被保全権利があり、かつ審判前の保全処分の必要性も認められるから、主文のとおり審判する。

(家事審判官 北谷健一)

物件目録<省略>

保全処分を求める事由

一 申立人らの離婚

申立人と相手方は昭和四三年一二月一一日結婚届出をなし、その後同人らの間に三人の男子が出生したが、昭和五九年七月二〇日離婚届出をなした。

二 離婚に至る経緯

相手方は結婚当初、土建業を営んでいたが、長続きせず、その後転々と職をかえ、気がむかないと長期にわたり仕事をしない状況で、生活費をほとんど入れなかつた。

申立人がそれをいさめると、大声を出し、はては暴力をふるい負傷させる有様であつた。たまりかねた申立人は相手方の兄らに、相手方を説得してもらい、子供を引き取つて離婚することにした。

三 財産分与請求の事由

1 前述のように、相手方は仕事が長続きせず、申立人が様々なセールスをして生活を支えてきた。最近でも相手方は毎月平均すると五万円程度しか生活費を入れず、申立人が毛皮のセールスを行つて毎月二〇万円以上の生活費を稼ぎ出し、親子五人の生活を支えていたのである。

2 財産としては昭和四八年に購入した別紙物件目録記載の土地(以下本件土地という)及びその土地上に新築した別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という)と昭和五七年に○○○駅北側付近に購入した中華料理店(○飯店と呼ばれている)のみであり、いずれも相手方の名義となつている。但し、いずれも、ほとんど時価相当分程度の抵当権が設定されている。

3 上の財産は、大半が申立人の出費により購入されたものであり、申立人親子のための欠く可からぎる住居である。

四 保全を必要とする事由

1 相手方は離婚前の話しあいでは、いつたんは申立人親子のために本件建物を分与するかのような態度を示しながらも、その後は疎甲第二号証のように何らの財産分与もしないと述べ、かえつて相手方が財産の全部をかつてに処分しようと、申立人に対し、印鑑登録証明書の交付を迫つているありさまである。

2 疎甲第一号証の報告書のとおり、相手方は既に明石市内の○○不動産という不動産仲介業者に本件土地、建物の売却を依頼している。

3 申立人は本件土地建物を失えば、申立人親子四人で住むことのできる広さの家屋を他に求めることは経済的に不可能である。

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